臆病者の謳うメメント・モリ

花田西宮の創作だったり日常だったりの一コマ一コマ

蜜の味、禁忌の味

罪悪感の味。

るーくの言ってた秘蜜パロガロ雷たぎった結果()


それは不慮の事故でした、その代償と言ってはそれはまた違うと思うのですけれど、俺は美しい人間に会いました。彼はどう見ても人間ではない羽を持つ俺の怪我を治療し面倒を見てくださいました。彼は手当てを受けた教会で神父をしているようでしたので、あまり特別なことではなかったのかもしれません。ですが、俺にとっては違ったんです。愛と呼ぶにはあまりに衝動的で、俺が俺でなくなるような感覚に涙さえこぼしそうになったのですが、これだけは確かなのです。そしてこれはあってはならない、初めの罪だったのです。
俺は、彼に、うっかり恋に落ちたのです。

俺はそれ以来、事あるごとに手土産と祈りと共に件の教会を何度も何度も訪ねました。彼の側にいたいと願ってしまったのです。恋をしてしまったことは仕方ないのですが、如何せん彼も俺も男、それよりも大きな壁は種族の差。一縷の望みさえありません。俺は側にあることができればそれでよかったのです。そう諦めることも、行動に移すこともなかったのです。これはきっと次の罪でしょう。彼に何も言わなかったことと、俺の欲が溢れたとき、しばらく会えないと告げた時に彼が少し寂しそうにしていたことに気付かなかった。これが、最も大きな、二つ目の罪にあたるでしょう。

しばらく俺は教会に足を運ばなかったのですが、しばらくして一人の少女が教会へ行きました。その日はちょうど結婚式が行われていて、俺は、私とでも言いましょうか、つまり少女の体を手に入れた俺は結婚式に乗じて彼との邂逅を果たしに教会へ足を踏み入れたのです。そこで新郎新婦の誓いを確かめる言葉を紡ぐ彼はやはり美しく、禁忌を侵すために見なかった時間の分まで救われたように心が軽くなりました。これでようやく対等なのです。種族も、性別も、恋に必要な舞台は完璧でした。そうだったはずでした。
ふと彼と目が合いました。俺は心が震えたのがわかりました。しかしそれも一瞬でした。彼は俺を見て少し頬を染めたように思えたのです。それは待ち望んだ結末のはずでしたのに、俺は恐怖で震えたのです。その表情を見た瞬間に色付く彼の顔と逆に俺の表情はこわばり体はがたがたと震えるのです。途方もない罪悪感が俺を支配しました。以前はなかったふたつの胸の真ん中に手を当て俺は教会から逃げるように出ました。外の空気を吸うと安心して、もう帰ろうと決意しました。改めて会うことはいつでも出来るのだからと。そう歩きだそうと踏み出した瞬間に俺は腕を掴まれてしまい勢いのままに座り込みました。顔をあげれば彼がいて、止まらない涙が視界を遮りました。罪悪感はいまだに俺を苛みます。どうして泣いているのかと聞かれた気がします。貴方の優しさが胸を抉るのですと答え逃げ帰る以外に、何もできませんでした。彼も、俺のようにうっかり恋に落ちたのでしょう。狂わせたという実感だけが俺を殺したのです。それ以来、教会で祈りを捧げる度に心が重くなるのを感じて、それでも彼に会うことはついにやめることができませんでした。どうしてでしょうね、この恋を叶えるために禁忌さえ犯し羽を捨て人間の少女の体を手に入れたのに、断然今の方が辛いのですよ、不思議ですね。

ずっと通い続けた教会でしたが、その日はなにかおかしかったのです。彼がいなかった。怖くて家に帰れば、手紙があるではないですか。俺と仲間を育てた、大天使様。嫌な予感はピークに達して、目眩さえ起こしそうでした。走って飛び出して、本能のままいなくなった彼を探しました。これほど女子のスカートを呪ったこともないでしょう。彼はどうしてほいほいついて行ってしまったのか、いや、俺よりも力ある大天使様の変装だ、仕方なかったのです。何よりも悪いのは守れなかった俺か、うっかり恋に落ちた俺か。これがきっと、最後の罪はです。とはいえ、もうここまでくれば後戻りは出来ないのですから、あってないような罪だったのですが。
自分を責め続けて、たどり着いたそこです。乱雑に開けられた地下への扉、それを開けて目に飛び込んだ光景に俺の体は自然と動いていました。大天使様が、彼に銃を向けていたから。俺はとっさに彼を突き飛ばしました。受けた衝撃に、俺の視界に羽が舞った気がしたのです。俺の姿はもとの姿に戻っていました。彼は気付かなかったと目を見開きました。騙していてごめんなさい。貴方の人生を酷く狂わせてごめんなさい。羽と血が舞う空間で彼は俺を抱き締めてくれました。それだけで俺は満足なのです。一瞬でも俺を見てくれて、恋をしてくれて、俺はとても幸せな夢の中この天使としての勤めを終わらせるのです。

これで、俺の罪は全てです。あとはあちらで償うだけでしょう。ですから、どうかそんな顔をなさらないでください、ガロットさん。貴方は俺の生み出した禁忌に囚われず、これから幸せに歩むのです、そうであってください。ありがとうございました、愛しています。愛してしまったのです、さようなら。



あくまで秘蜜パロと言いたいなんちゃって設定。