臆病者の謳うメメント・モリ

花田西宮の創作だったり日常だったりの一コマ一コマ

否定的な僕たちのための

何より暖かい日常

(先日紹介した異形っ子たちの日常です)

◼︎知るということ、
昴はセフィロトとアパタイトが探し出し、自分達も手伝って住めるようにした家とも呼べぬ質素なものから少し離れた森の中の大樹に背を預け座っていた。
皆同じ悩みを抱える彼らとは誰より分かり合える家族であることに変わりはないのだが、それでも一人になりたい時はある。
腕をふわふわと持ち上げてみれば昴の周りには黒い羽が大量に落ちていた。それを見て思い切り顔を顰めるとおもむろに自身の周りにあるそれらを踏みにじり始めた。これがなければどれほど楽に生きれただろうか。
ずっとぼんやりとそれを踏みにじり続けていた昴の視界を何かが動いた気がした。昴の目はいい。それは単純に視力というものではなく動体視力など、視覚にかんすることならばたいてい優れている。顔をあげれば、悲しそうな顔をしている梅子がいた。
梅子の頭には立派な角が生えている。異形のそれは彼女を大きく傷付けたはずである。まさにそう、昴の左腕と同じように。
「昴くん」
周りの視線にすっかり臆病になってしまった彼女は小さく、無意識であろうが足音を消すように控えめに駆け寄った。
「どうかしたのか、梅子」
昴が尋ねても悩むように口を開閉していた梅子であったがやがて手の内に大事そうに持っていたものを昴に見せた。
「…梅子、これはどういうことだ?」
梅子の手にあるのは黒い羽をメインとしたアクセサリー類である。
「家族」が見れば一目でわかる、昴の羽だと。
「昴くんには悪いと思ったんだけどね、聞いてほしいの」
昴は状況が飲み込めずに目を白黒させていたが、何事も話を聞かねばわかるまいと梅子に続きを促した。
「これをアパさんとセフィにいちゃんに、私達は町になんて行かないから、二人に頼んでこれを路上で売ってもらったの。…それはもう大盛況だったんだって!皆素晴らしいって、こんな綺麗な羽の飾りを見たことないって褒めてたって言ってたよ。」
にこりと笑って梅子は一番伝えたいことを家族に伝える。
「私達だって昴くんの羽綺麗だと思ってるよ。だから昴くんはそんなに嫌わなくていいんだよ」
昴は呆然と目を見開く。しんじられない、とその唇が動いた気がした。
反応のない昴に梅子の顔色はどんどん悪くなり、しまいには涙目で私なんかが出過ぎたことを言ったでしょうかごめんなさいと叫び始めた。
そんな梅子に苦笑して昴は梅子の頭を落ち着かせるようにそっと撫でる。
「いや、違う。ありがとう梅子、俺はとても嬉しい」
そう昴が笑えば梅子もはにかんで笑った。
「お前ももっと自信を持つといい。…こんなに思いやりある行動が出来る優しい奴だ、お前は」
昴の言葉に梅子はぶんぶんと首を横に振った。そんなことはないのだと。
そんな梅子に言い聞かせるように、あるいはただの独り言だったのかもしれないが、昴はつぶやいた。
「何の異常も無い者は俺たちを貶し弾き出すことしか出来なかったのに、散々痛めつけられた異形の者が何より思いやりを知るのだ。思いやりを助け合いを掲げる奴らよりも」

(それは思いやりに繋がるよ)

◼︎お腹いっぱいの愛情で
彼らが家と呼ぶ、家とは程遠いものより少し遠く、アパタイトとセフィロトは顔を見合わせた。
「ちょっとセフィ?これじゃ足りないじゃん」
「お前こそ…いや、そんなことを言ってる場合じゃねぇな」
二人の間には仕留めた獲物として巨大なイノシシがあった。普通に家族で食べるには問題ない量だと言えるのではあるが、如何せん彼らが拾って育てた少年少女達「家族」には大食らいがいる。
「ご飯の時間」にはもう時間がないがこのままでは大問題である。
溜め息が二つ重なり、二人は森の方へ再び足を進めた。
彼らとて腹はすいているのだが、どうにも家族と呼ぶ少年少女には甘くなる。
しばらくして家に到着した彼らはイノシシの他にいくつか小さな獣をつれていた。
「梅子、いる?早く料理してくれない」
「どうしてお前はそう言う言い方しか出来ないんだ、アパ!」
アパタイトの物言いをセフィロトが嗜めるのはいつもの光景である。
呼ばれた梅子は慌てて獣を受け取り簡易なキッチンの方へと戻っていった。包丁の音が聞こえて、すでに自分たちで木の実でも取ったのかスープのような、とてもいい香りがする。
玄関でそんなことを考えてればすぐそばで声がした。
「アパ、セフィ、ニールがとてもお腹をすかせてるんだ」
突然現れた少年に二人とも驚く。相変わらず気配のない、とぼやきつつニールと呼ばれた少女を見れば確かに食卓に突っ伏してぐったりとしている。
ちょうど梅子が食卓にご飯を運び込んだところらしい、子供たちはいつの間にか決まっていたお決まりの席に座る。
ぐったりとしている少女の前以外に置かれた料理はとても美味しそうだ。セフィロトはそこでイノシシを引きずって少女の側に置く。
「いただきます」
セフィロトの合図に皆揃っていただきますと復唱し食べ始める。セフィロトはまだぐったりとする少女の口元に巻かれたバンダナをそっと取った。
「クールニール、いただきます」
そう言えば嬉しそうにいただきます!と言って側に置かれたイノシシをむんずと掴んだ。
獣の足を掴み上げ躊躇いもなく食んだ。すぐに耳を塞ぎたくなるような音と共に骨を噛み砕き、彼女の食事が始まる。
見慣れたそれに反応するものはいない。これはただの日常だ。
「梅子、料理の腕があがったか?」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「調子に乗らないでよ。このくらいで」
「ひっ…ごめんなさい私なんかが!」
「梅子、アパさんはちゃんと認めてるよ」
「玉響の言うとおりだな」
たわいない話をしていれば5分とたたずクールニールと呼ばれた少女のごちそうさまでしたという声が聞こえた。
食べ終えたクールニールも加えて家族で他愛ない話をする日常はこの空間の誰にとっても大切なものであった。
「ごちそうさまでした」
アパタイトが頃合いを見てそう言えば皆復唱する。
社会から省かれた者で作り上げた食卓はとても幸せな食卓なのである。

(満たされた僕たち)

◼︎大人になろう
クールニールの様子がおかしい。玉響は首を傾げた。
おやつを食べているときにあんぐりと大口を開けて本能のままに食らおうとして…その口をバンダナに隠す。そのときの表情は本能に逆らったからであろう、とても悩ましげである。
「お腹が痛いの?クール」
問えば違う、と小さくかえってきた。
「どうしたの、悩んでるの?」
玉響は不安そうにクールニールに尋ねる。彼の不安に反応してか、頬には一つ、そこにあるはずもない目が開こうとしていた。
「………たべたくない」
ぽつりと返された答えに玉響は慌てた。病気か別の何かか、いや何より保護者であり責任者であるアパタイトとセフィロトに相談しなければと思考したところでまたぽつりとクールニールが零す。
「………誰も、たべたくない」
それを聞いて玉響の脳裏に浮かんだのは血塗れのアパタイトと慌てた自分たちを制止する彼の姿であった。
彼女の食欲は留まることを知らず、暴走する。暴走した彼女は本能のままにアパタイトの肩に食らいついたことがあった。
彼女は純粋にその異形を呪っているのだ、
玉響にはわからない変化が彼女にあったらしい。玉響はそっと頬の目を手で覆った。
子供であった彼女は今ようやく我慢を覚えようとしているのだ。
大人になりたいと願った少女に玉響は何も出来ない自分を恨んだ。きっとそれしか出来ない自分が誰よりも子供なのだろうと思い知らされた。

(たいせつなあのひとをまもるために)


力が尽きたんでこのへんで!
閲覧ありがとうございました。クールニールと昴以外は恋人募集中ですy((

逃げ道探して

ここまできたの


ポケ擬っ子紹介!
レシラムゼクロムが「とある事情」で行き場をなくした少年少女と過ごしてます。

訪れた人は皆その住人を見て眉をひそめる。
彼らは皆普通ではなかったから。異形だったから。

アパタイト(レシラム)…だいたい自分の言うことはまかり通ると思ってる。手厳しいが愛情故。僕を誰だと思ってるの系。高慢だが自分の身内と思う人にはわりと思いやりはある。

セフィロト(ゼクロム)…面倒見のいいにいちゃん。なんだかんだ言いつつも断りきれないいい人。異形達の喧嘩仲裁したりひっぱりだこ系苦労人。

フェルー(ユキノオー♂)…大きな腕とそこから生えたのか絡みつく根っこのようなものの異形。気配がほぼない。気がつけばそこにいる。動物に好かれやすい。静かな場所が好き。

昴(ムクホーク♂)…左腕から羽が生えたり飛びでたりしてる異形。目がいい。正義感と責任感が人一倍強い。和三国から流れてきた。ちょいちょいじじいくさい。流行りに疎い()こいつのいた後には綺麗な羽が大量に落ちてる。

梅子(メブキジカ♀)…頭に立派な角が生えてる異形。角を見られることに抵抗をもち見られてるとわかった瞬間泣きわめく。わりとネガティブ。逃げ足は速い方。ごめんなさいは口癖。

玉響(アメモース♂)…体のあちこちに目玉がある異形。腕は包帯首はマフラーで誤魔化してる。出来る限り閉じようと努めるが彼の意識にはあまり関係しないらしい。感情がたかぶると開きやすい。

クールニール(クチート♀)…口が大きく牙が鋭い異形。食欲は凄まじく人さえ食べる。マスクやバンダナで普段は隠してる。無口だがそれは口を開くと食欲がわきそうで怖いだけ。口を隠してないときはちょっぴり暴走しがち。

増えるかもしれませんがこんなメンバーでぼちぼち一目の届かないところで過ごしてます。恋人さんとか募集したいですー。

よろしくお願いします!

いろはにほへと【和三国】

ちりぬるを

こないだご紹介したうちのpkg世界観の皇城がある国…の東に位置する隣国「和三国」のご紹介

帝が収めるその国は正義と中立の孤高の御国

帝のもと和風、日本国風な国。周りが戦しようと中立。
でも仄暗い部分はどこにでもあってシジョウやコガラシのいた娼館だってここのもの。

つまり和風な御国です。
周りの国が技術ちゃんとしてるから携帯だってテレビだってある()


うちのブイズはここに住む見習い忍者。
師匠の指導のもと一生懸命問題をおこしてます。

ついでに軽く紹介するから……気になったら軽くお声をかけてください…

晴人(ハルト:イーブイ♂)…こいつらのまとめ役候補。体術で誰より勝るが忍術はからっきし。明るくてサバサバしたピュアなバカ。おなごは守るものである
潤(ウルウ:シャワーズ♀)…見た目はクール。美人。ただし爺口調。明るく失敗が多い。雨女である。
黄昏(タソガレ:ブースター♂)…携帯や機械に強い。忍者のくせに。甘党。振り回される不憫。口が悪い。男前というか言いたいことは正直に口から出る。恐ろしいまでに正直。
雷京(ライキョウ:サンダース♂)…足の速さは一番。偵察変装はお手の物。周りに紛れてさりげなく偵察。敬語で騒がしい皆をたしなめてる。
月夜見(ツクヨミ:ブラッキー♂)…この中で一番優秀。不器用ではあるが優しい。でも不器用。いざというときのヘタレ。
陽真(ヒサナ:エーフィ♀)…目を任務で弱くし、あまり実践は強くないが反射と忍術でカバー。目はほぼ見えてない。ぼんやり色と輪郭がわかるだけ。
草両(ソウリョウ:リーフィア♂)…気弱。なんというか周りに花が見える。おしに弱い。料理と遠距離攻撃が得意。キレると人が変わるがその記憶は本人にない。
緋雪(ヒユキ:グレイシア♀)…無口女子。仲間想い。女の子らしいことがわりと好き。忍術よりもお人形ですお花です。好きな人には忍スキル全投球してstkに近いつきまとい。

こんなやつらのいる国です。ほかの奴らはまた今度。

よろしくお願いします。

我等が王の下に跪け

ここから全ては始まる。また、終わりさえも始まった。

これは僕が自分の妄想をもとに考えた「pkgっ子達の世界観」です。もしかぶっちゃったりしてたらすいません殺す勢いで忠告してください。


「オハヨウ、世界」
その存在は世界を作った。自然を資源を命の始まりも。

だが世界に秩序はなかった。作らなかった訳ではなかった。そこに存在の思考は向かなかったのだ。何故なら、存在はただ独りきりだったからである。

荒れた世界を見ていると存在は心を病んでしまう。嫌よ嫌よという風に首を振ると、存在は存在の世界の中心に城を作った。城の周りに三つの塔を、城の中に二つの箱庭を。

そこに住まうことを許されたのは、最初は3羽の鳥だった。彼らは快く存在の願いを聞き届け、三つの塔を管理する。
次は箱庭、対立し合い相殺し合う二人は世界に笑って庭の管理を始める。
城には誰もいない。存在はすでにくたくたで、静かに覚めない眠りへと、城の奥深くに自らを封じた。

塔の管理者は存在の微かな寝息のような言葉を聞き、城に住まう者を呼ぶ。

この世界の支配者はこうしてできた。


以上が成り立ちですん…。
城に住む皇族と呼ばれる人達が管理する世界、それがここ。

皇族(ロイヤルファミリア)…皇城に住むことを許された人達。世界の支配者。選ばれた人達だから別に血のつながりはない。

皇城(ロイヤルガーデン)…皇族やその使用人が住まう城

三柱…サンダー、ファイアー、フリーザーの三人の賢者まとめて三賢人の方。塔のにいる。

双門…グラードンカイオーガさん。「箱庭」って呼ばれるとこにいる人。

創造神…世界作った神様。目覚めてはいるが引きこもり封印される前の記憶はほぼない。皇城から出たがらない。

こんなもんじゃないんですかねーーー!!!
皇城の門には門番のケーシィ♂とメタモンがいるんだ()
あと男前メイド長とかやる気ない執事長とかと皇族がわちゃわちゃしてます。

説明おしまい!!!(圧倒的説明不足)

我らは槍、最強の守り

攻撃こそ最強の防御である。

瀬名宅ジャッジさんの雇われてる暗殺者集団、“エイシス”のまとめでございます。

普段はアジトのカムフラージュであるカフェ、エイシスで働いたりしてます。
ですが、それ以外はジャッジさんから仕事をもらったり、時にジャッジさんやそのお客様の護衛をしたり。ジャッジさんの恋人さんなんかの護衛もきっとやってる。
実は結構寄せ集めの集団であり横の関係は薄い。

メンバーは10人です。

グラン(グラエナ♂)…リーダー。冷静であり、だいたいのことならなんでもできるハイスペック。セキの保護者みたいなもの。セキを保護したのはこいつ。一人で何でも出来る可愛げのない寂しい人。
CPはぷーちゃん宅の子。

カムイザ(ガブリアス♂)…ある日セキが拾ってきた青年。生きることがどうでもいい。生きることに興味がなく絶望してる。そんな面倒な人。恋人できたらその人のために生きるのかなぁ。腕利きの暗殺者。

ストック(アブソル♂)…笑えば可愛いと思う顔立ちの少年。でも無表情。暗殺者です当然。笑った顔はメンバーの誰も見たことがないらしい。クール淡々としてる。

テイル(ワニノコ♂)…素直で明るい良い子。でも戦闘員。アホの子。でもしっかり空気が読める。なんでこんなことしてるかわからないレベルの良い子だったりする。
CPは瀬名宅の菊乃さん。

ルイン(ウィンディ♂)…とある国の王子様らしい。何故かエイシスに所属してる。暗殺の仕事もきっちりこなす。自分のことはあまり語らない。無口だけどさりげなく気遣いできる子。

マオ(キルリア♀)…機械類に強くなんでも作れる。もっぱら武器を作ってそれを売ってる武器売り。感情がうすいというかずれてるというか。

セキ(ウルガモス♀)…エイシスに保護されてる女の子。人見知りが激しいけど懐いた人にはハグやらキスやら挨拶にする。戦闘は出来ません。カフェの裏方手伝ってるうちに飲み物いれるのと料理がクソ上手くなった。言動や行動は年齢より子供。お菓子が好きで餌付けのしがいがある。エイシスの中ではカムイザ、その他ジャッジのパンチャーさんに懐いてる。
CPは瀬名宅のヴィオさんです!

アルア(ボーマンダ♀)…情報処理、収集に長けた子。のんびりしてるけど根は真面目でしっかり。皆にきた仕事の管理とか。戦闘もそこそこ。カフェでの副店長という名の実質店長。

ヴィヴィ(ニャルマー♀)…暗殺者。自分のことはかえりみない男前。自分の周りが死んでくのが苦手で弱い人は苦手。実は暗殺も嫌い。殺したくないのが本音。
CPはるーく宅のマギカさん!

ギルト(コジョンド)…昔は闘技場で賭けに使われてた。敬語。見た目は美人だが子供っぽい一面がある。楽しいことは大好き。つかみどころがないところも。
CPは瀬名宅の焔さん。

こんなメンバーです…ギルトとセキ以外のCPや関係募集です……!気軽に気になるのいれば…!

今度うちのpkgの世界観投下しよう。

1と3の始まりは、

叢樹さんの一員、ガスマスクの子トライとモノのお話ーだと思う。

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モノとトライさんはこんな。

軽い小話です。


真白な二人だけの質素な部屋で少女と青年は過ごしていた。
青年は考える、このままここで過ごしていいのかと。
彼は自分たちはその場にいてはいけない存在だと考える。実験で作られた人工生命体、そんな自分たち。神ではなく人の作った命が許されるか。
「お前はどう思う?」
「うー?」
こてんと首を傾げた少女に答えが返せる訳がないとわかっていた彼は苦笑する。
彼女は言葉を持たないのだから。
生まれて間もない彼女はまだ言葉を理解していない。その意味を理解し、彼の言いたいことを理解しても、その舌は追いつかない。
彼女は賢い。本当は問いかけの意味も全て理解している。
彼の答えなどとうに出来ているのだ。
「ゔー?」
悩む彼を心配してか気遣わし気な声が少女から漏れる。感情なんてものを彼は理解することが出来なかったが、自分の知識に当てはめるとこの感情はもしかしたら、なんてらしくない思考を早々に遮断する。時間の無駄であると。
「…なぁ、俺が出ると言えばお前、ついてきてくれるのか?」
このままここで作られたままにこの知識だけを使われるなんて、お前だってここで作られてそのまま道具のように身体に管を繋がれて切り刻まれて生ゴミとして処分される、これは自分が作ったなら何をしていいというこの考えを放置してもよいのか。
「ゔー」
彼女は赤子のように無垢に笑って、彼の手を握った。彼の名前を呼んで。いいんだよ、と言われた気がした。
そこから長い期間、じっくり準備を進めた。

準備に数ヶ月かかったが、それでも彼と彼女は決行した。
午前九時。
割り当てられた部屋で二人はガスマスクをつける。これがなくては二人はこの部屋の外で生きてはいけない。
廊下を早歩きで抜ける。少女は左右に気を取られたがその度に彼が窘めた。
「おい、×××。何を見ている?」
「…ゔー」
彼女の視線を見て彼は絶句する。それでも拳を握りしめ少女を引き連れた。
両脇に並ぶガラスのケース。液体に浮かぶ人間のような形の肉塊にその目は射抜くようにこちらを見ていた。
ケースの向こうにあったのは檻の群れ。その無数の目も全てがこちらを向く。
どうみたってあれは、あれらは、彼達は、
俺の仲間じゃないか。
よぎった言葉は飲み込んだ。
少女は彼らを連れて行かないの、と純粋に疑問に思っただけなのだ。
置いて行く俺は酷いか、だがしかし神の作る世から離された俺を赦すものはないだろう。
途中で研究員に見つかったが、出口は目前だ。×××も俺も戦闘が弱い訳ではない。研究員から拳銃を奪いつつ逃げる。
途中で気になる言葉を研究員から聞いた。彼女、×××を執拗に取り返そうとしていたやつだ。
「×××を…!そいつには…!計画が…台無しに…」
気になったが俺は彼女を連れて外の世界へ出た。
外のことは何も知らないが、俺たちには知識があった。

数ヶ月もすれば俺たちを探す研究員の数も減った。諦めた訳ではないのだろう。
「ゔー!」
「…前から思っていたが、その名はやめろ、×××」
「?」
「研究員たちが生み出した俺たちにつけられた名前」。反吐が出る。
「ゔーは、や?」
「ああ、嫌だ」
この子は本当に賢い。あそこを出て数日、言葉を少しずつ操れるようになってきた。
「“あそこから逃げ出した俺たちにつけられた名前”がほしい」
「ゔー?ちがうの?」
「…そうだな、お前にも名をやろうか。」
少し考えこんだのちに告げる、自由の名。
「1(モノ)。お前はⅠ(モノ)でどうだ?」
「…?」
「お前の名前だ、モノ」
×××と呼ばれていた少女は新しい名前に微笑み返す。
「ゔーは?ゔーの、なまえ」
「俺…?」
ゔーという愛称の示すその名で呼ばれるのが嫌ならやはり考えるしかあるまい。
「…俺はⅢ(トライ)でいいよ、トライだ」
「…とらい」
優しく肯定するように呼ばれれば、それはもう彼の名前。

このちょっとあとにキイトあたりに保護されて叢樹へ()





君が笑うと世界が止まる

さっきの魔王様と花嫁設定です可愛いのあらぶるよ……

SSその1

アストのリオへの評価はちゅうくらい。ちょいちょい仲良くなりかけの時のお話。リオもジオリスクに惹かれつつある時期。

「今日はこっちに行こうっと」
そう呟くとリオは薄暗い廊下に足を進めた。彼女の周りには何の気配もない。
悪く言えば囚われの状態である彼女ではあるが、基本的に彼女は城の中の行動を制限されていない。今のように護衛や見張りさえいないままに城を散策する日も少なくはない。とはいえ仮に囚われのお姫様だとしてもフィクションの中の彼女達には助けにきてくれる人がいるのだ。助けどころか知ってる人物さえいない自分にリオの口には自嘲めいた笑みが浮かんだ。

「きゃっ!?」
しばらく歩いたところで、何かにつまづきよろめいた。とっさに手をついてこけることは防いだが足を痛めたらしく上手く立てない。
「困ったなぁ」
さてどうしたものかと悩んでいるリオの視界が白く染まった。
「誰かいるのか?」
眩む視界でどうにか目を細めてならすと、リオに近付く数人の青年が見えた。
(このお城の人じゃない…?)
何せこの城の中でリオを、偉大な主の花嫁を知らぬものはいない。

「勇者…?」
リオの怪我を治療しなんとなく共に行動することになった(リオは一人でいいと言ったが青年たちは危ないと聞かなかった)道中で彼らについてリオは尋ねた。
彼らは勇者と名乗り魔王を倒し平和を求めてきたらしい。
魔王を倒すという言葉の意味をゆっくりと噛み砕いて吟味する。何も知らないこの世界でこの城の外を見たことがないリオにとっては、その意味を理解するのに時間を要した。
頭がその言葉の意味を理解すると同時に反論が口から出かける。しかしその反論が声となる前にリオを連れた勇者一行は突然の地響きにバランスを崩した。
地響きの招待とは巨大な蛇のモンスター。リオは経験をするはずもないが、エンカウントと呼ばれるそれである。
真白い大蛇はリオを見て動きを止めると勇者一行に襲いかかる。
狙いは花嫁、ただ一人。
その執拗なリオを狙う攻撃に勇者一行も気付き、リオを守ろうとするが大蛇の牙がリオのドレスの裾を捉える。
リオは敵意がないとわかりきっている大蛇に身を任せた。

「花嫁サマ」
傷つかないように優しく地面に降ろされて大蛇に呼ばれてハッと周りを見渡す。
いつの間にか先ほどのダンジョンと呼ぶべき荒れた廊下とは一転、いつもリオが過ごしているような綺麗な部屋だ。
「…蛇さん、あの人達はどちら様?」
「…アレハ、我ガ主ヲ殺ス…為ニ人間ガ寄越シタ…勇者デス」
片言の言葉を聞きながらリオの表情は暗く沈む。
見たことはないが、リオだって人間だ。この世界の人間を愛したいと思っている。いつか会って話したいと思っていた。だが、惜しまぬ愛を捧げてくれて、この世界でわからぬことばかりの自身に花嫁なんてものを押し付けたのは確かにそうだがそれでもその不安を解消するように不器用に努めてくれたその人を殺すと言われれば首を縦に振ることだけは、どうしてもできなかった。
「…蛇さん、貴方私のお願い聞いてくれる?」

勇者一行は先ほど会った、恐らくは魔王に攫われて逃げようとしていたのではないかと思われる少女を気にかけていた。
進む道で探しても見つからなかった。進むにつれ敵も強くなっている、そんな気の抜けない状態の中ふと勇者一行は開けた場所に出た。
ダンスでも踊れそうな広いホール、大きな窓はいつの間に夜になったのやら月や星の光を拾う。
最初に気付いたのは誰であったか。
勇者一行の入ってきた逆、階段の上に月を背負い立っていたのは間違いなくかの少女。一つだけ違うのは、その手に握られた一振りの剣か。
厭味なほどに時間がスローになる。確かに二人の目が合って、少女が足を動かそうとしたその瞬間に、
時間は唐突に戻る。
二人の横から大量の炎がホールに溢れ勇者一行は撤退を余儀無くされた。
残されたのは少女と傍らに現れた狼のような姿のモンスターだけである。

「…花嫁、お前どういうつもりだ」
ギロリと鋭い瞳が細められた。
リオは俯いた顔をあげようとしない。やがてその影にぱたりと雫が落ちる。
狼が狼狽える。なんだかんだといって少しずつ見直している少女の涙はどうにも苦手だった。
ふわりと黒がリオの体を包んだ。
「…王…様…」

気配なく魔王と呼ばれる男、ジオリスクは背後からリオを抱き込んだ。
「何があった、花嫁。あの人間に何かされたか…?あぁお前に良くしてくれたようだから見逃したが…」
「…何もないわ」
ゆるゆると首を振る。魔王はリオの体を反転させ真正面から再び抱きしめる。
「ごめん…なさい」
ぽつりと、小さな声が狼と魔王の鼓膜を震わせる。
「知ってほしくなかったのに…貴方達を嫌う人間が…いるって…!私みたいな…もっと優しい人もいるって!なのに…ごめんなさい…!」
少女のこぼした願いと雫は、人間を信じる気をとうに捨てた二人に響くことはない。
それでも自分を守りたい、彼女の信じる気持ちをどうしてもこの子から取り上げたくなくて、それを守りたいと願って、魔王は黙って花嫁を抱く腕に力をこめ、狼は目を伏せて二人の足にすり寄った。


この大蛇のちにリオがミシロと名付けますん((

その2
もう完璧に仲良くなって旦那と嫁くらいの扱い。アストも仲良し。どうしても街にきたいリオの願いが叶った。

「わぁ…人間がいっぱい…」
ほうとため息をつくリオの頬は紅潮している。隣で狼の姿をしたアストがため息をつく。
「『姫様』、落ち着いてください」
今回初めて城からの外出を許可されたリオは護衛としてモンスター姿のアストを引き連れ街に繰り出した。当然魔王もついてこようとしたが主が外出とは何事かとひきとめられ責められたため泣く泣くリオを見送ることとなった。
リオの服装はお忍びには向かない相変わらずのドレス姿だ。もっと庶民の装いをアストとリオは提案したが魔王は首を縦には振らなかった。我が花嫁に粗末なものなど、ということらしい。
よってドレスにマントをはおり、とある王女のお忍び、という設定でアストとリオは通すことに決めた。

「姫様、どこか見たいところはございますか?」
「んー…ない…というかわかんない。知らないもの」
リオの返事にアストは納得すると歩きながら見ようと決める。
「えへへ、でもお姫様って響きいいね」
にこりとリオは満足そうに笑う。
「…花嫁、お前は普段からそれに近い位置だがな」
「そう?でも憧れじゃない」
街をぐるりと見渡して顔を綻ばせるリオにアストは目を細める。

「…姫様、止まって」
「凄い人だかりね、アスト、これは?」
「…大道芸のようですね」
隙間から前に体を滑りこませ二人は大道芸が見える前まで移動する。
「すごーい!」
ひとしきり終われば人だかりは嘘のように解散してしまう。
「まるで魔法のようだわ、ねぇアスト?」
「…魔法ならばもっと美しい。かのお方はもっと素晴らしいものを、お前が頼めばいくらでも見せるだろうに」
「でもね。魔法なんてなくても、人は生きてるんだ!…って思わない?」
アストは無言で、リオの発言を図るようにリオの顔を見上げる。
「…わからんな」
「…人は嫌い?」
「ああ」
アストの言葉にリオは寂しそうに眉を下げる。でも優しそうな微笑みを崩さずに、膝を折って狼と視線を合わせた。
「私のことは、嫌い?」
「お前…お前は…」
アストの瞳がまっすぐにリオの目を捉える直前、彼女は悪戯な笑みを浮かべ立ち上がる。立てた人差し指をアストの眼前に突き付けてまたおかしそうに笑った。
「『姫様』には敬語でしょ、護衛さん」
くるりとマントとドレスを翻して先を歩く背中は答えを拒絶しているように見えた。
「寂しいなら甘えればいいのに、姫様」
ぽつりと、どこにいても一人ぼっちのお姫様の背中をアストは追った。




勇者が魔王に勝ってしまって、今まで行けなかった(結界で)フロアに勇者が来て最後のドアを開けたらいたリオが次に開けて来るのは絶対に私だからと言った約束してたのに勇者が来て絶望するバッドエンドもいいかt((